第49章 いつもの日常の中で
「もう1回言って。」
「何を…?」
「あ・な・た。」
「やだよ。」
「しょーくんからの“あなた”呼び、良かったのになぁ。」
「深い意味はありません。」
「あはっ。しょーくん可愛い。耳まで真っ赤。」
「もう、うるさいよ。」
可愛いってなんだよ、可愛いって…。
ダメだな、やっぱり調子が狂う。
「あ~、ちゅうしたい可愛さだなぁ。」
ちゅ、ちゅ、ちゅう…???
身体を起こした智くんが、上半身を俺に被さるように手をついて、ジリジリ距離を縮めてきた。
「ちょ、ちょっと…な、なに…。」
「ちゅう。」
「しません。」
「ダメ?」
「しないよ。」
「あはははは。そっかぁ。ダメかぁ。」
「…そうだよ。」
「何でダメなの?」
「ここ…学校だし。」
智くんが目を見開いてキョトンとしてる。
「ど、どうしたの…?」
「学校じゃなきゃいいのかなって…ちゅう。」
「違う、違う、違う。どこでもダメだから。しないから。」
「そっかぁ…そうだよね…。」
智くんがあからさまにシュン…とした。
期待させるようなこと言っちゃったかなぁ…って思ったら、何だか申し訳なくなった。
「ごめん…。」
「ううん、仕方ないよ。無理されるよりはね。」
身体を離しながら、ふにゃんと笑った智くん。
だけど、俺に気遣って笑ってくれてるんだってわかるよ。
ちょっとした表情の違いが、俺にはわかるから…。