第48章 そのままでいい
俺も小さい頃、留守番中に母ちゃんの化粧用品から口紅を取り出して塗ってみたり、いけないとわかっていながらもネックレスや指輪の綺麗さに惹かれて、着けてみたことがある。
俺の場合は興味本意だったけど、翔くんはそれとはまた違うのだろう。
だから、俺の前でだけでも思う存分、翔くんの好きなものに触れさせてあげたいっていう気持ちが強くなっていったんだ。
後日また、あのお店に翔くんを連れて行った。
「翔くん、こういうのってさ、見てるだけでもワクワクするね。」
「えっ…智くん?」
「俺がもし自分用に選ぶとしたら…そうだな、これなんて着けたいかも。」
俺はブルーのラメ入りの四つ葉のクローバーのペンダントを手に取って、翔くんに渡した。
受け取った翔くんの手が少し震えている。
「あっ…いいね、智くん。ラメが入ってて可愛い。」
びっくりさせて、ごめんね、翔くん。
そのペンダント、この前さ、翔くんじっと見てたもんね。
「それ、翔くんに似合ってる。」
「そ、そうかな…。」
照れてるし、はにかんでる…可愛いな。
「他にもグリーンとイエローとパープルとピンクがあるけど…翔くんならどれがいい?」
「俺?俺なら…ピンク…かな。可愛らしいし。」
「んふふ。たしかに可愛いね。」
「智くんも、そう思う?」
ぱぁっと笑顔になった翔くん。
「翔くんと色違いで買おっと。」
俺は2色のクローバーのペンダントを手に、会計に向かった。
後ろを振り向くと、翔くんはキョトンとしていた。