第9章 色を探して
先生が指したのは、薄い茶色に塗られたつつじだった。
ピンク色に咲き誇っているつつじに交じって、しおれている薄茶色のつつじ。
数日前にはピンクの花弁を輝かせていたであろう、そのつつじ。
僕は、ありがとうの思いを込めてたのに。
帰り道は、気持ちが沈んでいた。
そして…
それ以来、僕がその場所に行くことはなくなってしまった。
「…しょ、く。しょう、くん。しょうくん。」
ハッ…
「ふふっ。やっと起きた。」
「ごめん…。おはよう。」
「おはよ、しょうくん。」
ちゅっ。
「んふふ、おはようのちゅー。」
「ちょ…っ、ドア開いてるから!母さんに見られたらどうするの…」
「さっき、“翔をよろしく”って出掛けて行ったから大丈夫。」
「だからってさ…。」
「いやだった?」
「いやなわけないよ。」
ちゅっ。
「智くんに、お返しのチュー。」
「んふふ。嬉しい。」
あれから成長した、俺たち兄弟の…
今できる最大のスキンシップ。