第9章 色を探して
あれは小学5年生の時…
図工の授業内容は風景写生だった。
僕たちは絵の具セットと板を持ち、先生の後について正門を出た。
向かった先は、10分ほど歩いた所にある城址公園。
先生のペースに合わせて、緩い坂道を歩く。
小柄な僕は、人より多いであろう歩数で進んでいった。
荷物を持って歩くのはきつかったけど、大好きな景色があるから頑張れた。
行動していい範囲と集合時間を先生が伝え終わり、みんなそれぞれ描きたい場所に散らばっていく。
僕も始めから決めていた場所に向かった。
そこからは、僕の大好きなお兄ちゃんが通っている中学校が見える。
やわらかな笑顔で、絵が得意なお兄ちゃん。
絵が完成したら、お兄ちゃんにも見せたいと思っていた。
僕は暫く中学校の校舎を眺めていた。
“お兄ちゃん……おにぃ……さと、くん……智くん……”
そうして数分が経ち、筆箱を開いた。
鉛筆で薄く下書きをして、絵の具で色をつけていく。
左手前には、いま僕の目の前にある濃いピンク色のつつじ。
中央から右側いっぱいには中学校の校舎。
僕は絵は得意じゃないけど、一生懸命頑張って描いた。
でも…
「茶色い花なんてありません!」
先生のひとことで、僕は…僕の想いが…否定された気持ちになってしまったんだ。