第47章 戸惑うこともあるけれど
唇を離すと糸を引いていた。
それが何だか恥ずかしくて。
「頭が痛い。熱もきっと上がったよ。」
俺がそう言うと、智くんはニヤッとした。
「今日の翔は、拗ねてばかりで可愛いなぁ。」
「拗ねてないし、可愛くなんてない。」
「ほら、頬っぺた膨らんでる。」
智くんが人差し指で頬をツンツンしてきた。
二人でいる時のいつもの雰囲気に、自然と涙がポロポロと出てきてしまった。
「翔…?」
「だって…学校でこんな風にしたことなかったから嬉しくて…。」
「翔はイチャイチャするの、好きだもんなぁ。」
智くんは俺を抱きしめて、頭をポンポンしてくれた。
「そうだよ。なのにさ、学校では我慢しないといけないなんて…。」
「今朝もヤキモチ妬いてたもんな。」
「ヤキモチじゃないもん。智くんと他人行儀でいるのがイヤだっただけだもん。」
「そうか…そうだよな。」
「智くん…?」
「そろそろさ、皆に公表するか。」
「えっ…いいの…?」
「うん。今もさ、保健室に行くのをさ、“俺が俺が”って皆が言っててさ。大変だったんだからな。」
「嘘…。」
「嘘じゃないよ。俺が誰よりも早く、翔のカバンを手にしたからさ。ここに来れたってわけ。」
「智くん…。」
「“何で大野が?”って、皆びっくりしてた。」
「あはは。そうだよね。」
「ごめんな。翔をさ、こんなに悩ませてたなんて思ってなかったんだ。」
「うん…。」
「これからはさ、堂々とイチャイチャしような。」
「あっ…えっと…、イチャイチャは二人の時がいいな。学校では仲良しだな、程度でいいから…。自分たちから公表しなくてもさ、自然とわかると思うし…。」
「ふふっ。わかった。」
智くんは、ちゅっ。と俺の唇にキスをして、教室に戻っていった。
「ありがとう、智くん。」
俺はカバンをギュッと握りしめた。