第47章 戸惑うこともあるけれど
保健室で熱を測ると、微熱があった。
俺、体調も悪かったのか。
早退するにしても、今すぐにはカバンを取りに教室に行きたくはなかった。
俺は暫くの間、ベッドで寝かせてもらうことにした。
保健の先生は用事があって30分ほど席を外すからと行ってしまった。
一人のほうが気がラクだ。
俺は目を閉じた。
しょ、しょう、翔…
智くんが俺を呼ぶ声がする。
学校で“翔”なんて呼んでくれるはずはないから…空耳かな。
そんな風に思っていると、
ペチン。
「痛っ。」
智くんが好きだと言ってくれる自慢の丸いおでこを叩かれて、思わず目を開けた。
「さと…く…なん、で…?」
ベッドサイドに智くんがいる。
「翔、熱があるんだって?」
智くんの足元には俺のカバンがあった。
「保健の先生がさ、取りに来たんだよ。だから様子見がてら、俺がカバンを届けますって…。」
眉を下げて心配そうに俺を見ながら、智くんは俺の手を握った。
少しヒンヤリしている智くんの手が気持ちいい。
だけど、今日の俺は素直じゃないんだ。
「教室に戻っていいよ。保健の先生が戻ってきたら、家に帰るから。」
布団で顔を隠すと、すぐさまそれをはがされた。
そして智くんは、俺の両手を掴んでベッドに押しつけた。
「なにすっ…。」
「翔。」
甘い声で名前を呼ばれ、唇を塞がれた。
「んーっ、んーっ。」
今日の俺は本当に素直じゃなくて…イヤイヤと頭を振って抵抗した。
それでも智くんは、甘くて優しいキスを続けていて。
俺の心を徐々に蕩けさせていったんだ。