第46章 不器用な俺たち
俺は、とりあえず駅に向かうことにした。
途中で翔くんに電話をしてみると、3コールくらいで電話に出た。
“もしもし…。“
電話から聞こえる音からして、外にいるようだ。
“翔くん、今さ、どこにいる?”
“えっと…あっ、智くんが見えてきた。”
“えっ?”
少し先にパーカーにジーンズ姿の翔くんがいたんだ。
俺は通話ボタンを切りながら、翔くんの元に走った。
「えっ、あ、さと…。」
俺はそのままの勢いで翔くんの腕を掴み、物陰に向かった。
「さと…んんっ…。」
そして翔くんをギュウッと抱きしめて、翔くんの唇に自分の唇を押しつけた。
はじめこそ強引だったけど、翔くんの手も俺の背中に回ってきて、徐々に甘くて深いキスに変わっていったんだ。
唇を離しても、俺たちは抱きしめあっていた。
「はぁはぁ…。もうっ…びっくり…した…。」
「翔くん…どうしてここに?」
「あっ…うん、散歩…的な?」
「散歩…?」
「智くんは?」
「俺は…そう、ジャージをね、また持って帰っちゃったからさ…。」
「あ、そうだったね。」
「だけど、本当は違うんだ。翔くんに会いたくて会いたくて会いたくてたまらなくなったんだ。」
「智くん…。僕も本当は、智くんに会いたくなって…。」
「だよね。散歩って言ったってさ、こんな時間にここまでは普通は来ないもんね。」
「お見通しかぁ…。」
「…メール…最後まで見たよ。」
「うん…。」
「嬉しかったよ。すごく。」
「ホント…?」
少し身体を離した翔くんの、俺を見る目が潤んでいる。
「俺も翔くんが大好きだし…。」
「うん。」
「いつか…翔くんとしたいなって思ってる。俺の大好きな人だから。」
「智くん…。」
「俺ね、大好きな人としたいの。男だからって気にしなくていいんだよ。俺が大好きなのが翔くんなんだから。ねっ。」
「さと…く…。」
翔くんの大きな目から、キラキラした涙が流れた。