第46章 不器用な俺たち
俺が本来降りる駅を過ぎて間もなく、翔くんが目を覚ました。
「…んっ…。さと…く…。」
寝ぼけ眼でポワンとしている。
可愛さが半端なくて、ドキドキした。
目を擦りながらキョロキョロしはじめて、漸く隣にいる俺を認識したようだ。
「あれ…?さとし…くん?」
「あと2駅だからね。」
そう声をかけると、翔くんはニコッと微笑んで再び目を閉じ…頭をコテンと俺のほうに凭れてきた。
俺の心臓がうるさいくらいにバクバクしている。
翔くんは無意識にしてるだけなんだ。
自分にそう言い聞かせたけど、翔くんの心地よい体温が伝わってきて…こういうことに慣れていない俺は、はやる気持ちが抑えられなくて…
翔くんの肩を抱きたい衝動にかられる。
俺は左腕を回して翔くんの肩に触れてみた。
だけどあからさますぎて恥ずかしくなってきて、その手を少しずつ下げて左腰に回した。
うん、こっちのほうが自然な感じだし、周りの人には見えにくいだろう。
ふふっ。
自己満足に浸っていると、「んんっ。」っと身じろいだ翔くんの手がソロソロッと俺の右腰に周り、頭を俺の左肩にスリスリしてきた。
うぉっ。
今までこんな風にされたことなんてなくて。
頭はパニック、体はウズウズ。
キス、したい…咄嗟に思ってしまった。
だけど、ここは電車の中だし、翔くんの許可なしにするのは…。
せめてこれくらいは許して…と思いながら、翔くんの左腰に回した手でほんの少しだけ翔くんを自分のほうに引き寄せた。
翔くんが降りる駅は次の駅。
もう少しこのままでいたいけど、翔くんをそろそろ起こさないといけない。
「翔くん、翔くん。起きて。」
「んん~っ。」
翔くんの頭が動き、ふわサラな髪の毛が俺の鼻を掠めた。
「へっ、へっ…へっくちん。」
不意にクシャミが出てしまった。
「んっ…さとしく…だいじょ、ぶ…?」
翔くんがゆっくり目を開けた。