第46章 不器用な俺たち
翔くんは紙袋から取り出したジャージを、ギュウッと胸に持った。
「やっぱり…なんか…いい匂いがする…。」
「匂い…?」
そうだ。2日間続けてジャージを抱きしめて眠っちゃったんだ…俺。
そのジャージを鼻にあてて匂いを嗅いでいる翔くんに申し訳なくて。
正直に話そうと思ったら
「甘くて…ミルクみたいな…いい匂い。うん、落ち着くなぁ。」
そう言って翔くんが目を閉じたから、言い出せなくなってしまった。
暫くすると、翔くんの頭がコクリコクリと船をこぎはじめた。
何度か声をかけたけど、起きる様子はなくて…本当に眠ってしまったようだ。
気持ち良さそうに寝ている翔くんの顔がすごく可愛い。
睫毛は長いし、唇は思っていた以上にぷっくりしているし、ほっぺたも柔らかそうだし、色は白いし。
普段はマジマジとは見れないから、この機会にじっくり見てしまった。
いつか…
その頬に唇に…触れられる時がくるのかな、俺。
そんなことを考えていた。
俺が降りる駅まであと1駅。
翔くんを起こさないと…。
翔くんの肩をトントンしようと伸ばしかけた手…俺はそのまま握って膝に戻した。
もう少し一緒にいたい。
翔くんが降りる駅まで、乗っていようと思った。