第46章 不器用な俺たち
翌日、駅には既に翔くんの姿があった。
翔くんも俺に気づいて、胸のあたりで手を振ってくれた。
翔くんのほうに向かって数歩進んだところで…俺は足がすくんでしまった。
女の子が二人、翔くんに話し掛けたんだ。
そうだよな…あんなにカッコいいんだもん、モテないわけがない。
胸がズキンとした。
グイグイくる女の子たちに翔くんは困ったような表情をしていたけど、その様子を見ていたくなくて…俺は視線を反らした。
だけど。
女の子たちのキャーキャーした甲高い声に混じって
「大切な人を待たせてるから。」
翔くんの声が聞こえたんだ。
俺はハッとして再び視線を戻した。
お互いの存在をアピールするかのように、ニカッて白い歯を見せながら翔くんが大きく手を振ってくれていた。
翔くん…。
好きだ…。
大好きだ…。
俺…この人が…
翔くんのことが大好きだ。
俺も翔くんと同じように大きく手を振り返した。
「お待たせ。」
「ううん。僕も少し前に着いたとこ。」
「あ、今日は忘れないうちにジャージ渡しておくね。」
「うん。ありがとう。ごめんね、届けてもらっちゃって。」
「いやいや。借りたの俺だし。」
ふふって笑いあった。
俺たちは電車に乗った。
俺が5駅目、翔くんは7駅目で降りるから、それまでは一緒。
家族構成だの趣味だの話をしていたら、翔くんがおもむろに紙袋からジャージを取り出しはじめた。