第46章 不器用な俺たち
俺たちは「翔くん」「智くん」と呼び合うことにした。
「えっと…せっかく知り合いになれたからさ、連絡先を交換してもらえないかな…。」
うわぁ。まさか翔くんから言ってくれるなんて…。
自分の頬に手を当てて、照れたように言う翔くんが可愛らしかった。
「うん、いいよ。俺もそう思ってたから。」
俺の言葉を聞いた翔くんの表情がキラキラしていて…つい見とれてしまった。
「智くん…?」
「あっ、今スマホ出すね。」
俺の声色も自然と弾んでしまう。
ウキウキしながら取り出したスマホが、翔くんと同じ機種の色ちがいだった。
それだけのことなのに、すごく嬉しくて。
俺はブルー、翔くんはワインレッドで…気高い感じが翔くんに似合ってるなって思った。
「それじゃあ、また…。」
「またね。」
名残惜しかったけど今日は帰りが遅くなってしまったから、仕方がない。
俺は翔くんが電車に乗るのを見送った。
自宅に着き、夕飯に間に合ったことにホッとした。
部屋に入り、カバンと紙袋を机に…
あっ。
紙袋を持ったままで…ジャージを返しそびれたことに気づいた。
何やってるんだ…俺。
アドレスを交換したことに浮き足だっていて、ジャージのことはすっかり忘れていた。
急いで翔くんにメールを送ると、明日は使う予定はないから大丈夫ってことで、ちょっと安心した。
明日は俺が、翔くんの学校の最寄り駅に行くことになった。
夜はベッドに入ってからも、スマホの翔くんからの返信画面を何度となく読み返しては
「むふふ…ふふふ。」
ニヤニヤが止まらなかった。
気持ちが高ぶっていて、なかなか寝つけない。
俺は紙袋から翔くんのジャージを取り出し、胸に持ちながらベッドに再び入った。
爽やかな匂いと手触りの良さに誘われたのか、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。