第44章 溢れる
唇が触れるだけのキス。
唇を離すと、櫻井は頬だけでなく耳までも赤くなっていた。
「…櫻井。」
その耳元で甘く囁くと、ビクンと跳ねらせた櫻井の身体がソファーに横たわるような体勢になり、俺は櫻井に乗り上がってしまった。
「ご、ごめん。」
櫻井の上から降りようとしたけれど、櫻井の腕が俺の背中にしがみついていて、そうはさせてくれなかった。
お互いの体温や呼吸がわかるほどに近い。
目があった俺たちは、再び唇を重ねた。
乾いていた唇が湿り気を帯び、ちゅっ。ちゅっ。と音をたてる。
背中に回していた手で、ほどよい筋肉のついた背中や柔らかい髪を撫でた。
櫻井に触れれば触れるほど、口づけが深くなっていく。
「んんっ…。」
舌を差し込むと、櫻井の舌が引っ込む。
歯がカチンと当たり、はがゆい。
「櫻井…舌…出して。」
俺の言葉に櫻井の舌がゆっくりと出され、すぐさま絡めとった。
「ふぅ…ん…。」
キスの合間に聞こえる蕩けそうな声に、俺の身体が疼く。
「櫻井の声に煽られるんだけど…。」
「ばっ…ばかなんじゃないですか。」
慌てる櫻井が可愛い。
「…でも…煽られるってことは…僕で感じてくれてるんですよね…。」
「あぁ、そうだよ。」
「それなら…もっと感じてください。唇だけじゃなくて…。僕も大野センセをもっと感じたいから…。」
俺の首に櫻井の腕が回り、誘うような目をしながら濃厚なキスをしてきた。
俺は世間体とかもう考えられずに、櫻井を抱きしめてベッドにもつれ込んだ。