第43章 俺の隣り
裏庭にある古いベンチ。
人の目にあまり触れない場所…泣いてる大野を連れ出すにはそこしかないと思った。
繋いだ手はそのままに、ベンチに腰を下ろした。
「ありがと、櫻井くん。」
「あっ…うん…。」
「あのままだったら…。」
「ん?」
繋いでいないほうの手で涙をゴシゴシ拭く大野は、意外にもニコニコしていた。
「僕、抱きついてたかも。」
「えっ…?」
抱き…つ、く…?
「本当に嬉しかったから。」
そう言って、ふにゃんと俺の大好きな笑顔をみせたんだ。
「そんなに…嬉しかったの?」
「うん。」
「抱きつきたくなるほど?」
「うん。」
「そっか…。ごめん、今まで。」
「仕方ないよ。嫌いな人となんて話したくないもんね。」
「…はぁっ?」
「違うの?」
「嫌いだなんて…そんな…。」
「嫌いじゃないの?」
「うん…。」
「じゃあなに?」
な、なんだ。予想もしてなかったぞ、こんな展開になるなんて…。
大野が首を傾けて俺を見ながら、繋いでる手を更にギュッと握ってきた。
その手がジワジワ熱くなる。
「えっと…その反対だから…。」
「反対…?何の反対?」
「だから…嫌いの反対…。」
「嫌いの反対…。それなら、ちゃんと言って。櫻井くん。」
「だから…。」
俺は意を決するしかないと思った。