第42章 時の過ぎゆくままに
タイミング良く智くんに会えるのは奇跡的だから、すごく嬉しかった。
智くんに会いたいって思っても、クリーニングに出すものはそんなにあるわけでもなく…
今は智くんが家の手伝いで、仕事中なんだってことはわかってるんだけど…
顔を偶然合わせたら、やっぱり話をしたくなってしまうんだ。
どこの高校?部活は入ってるの?趣味は?誕生日は?なんて…質問攻めにしていたら…
「こらこら。足止めさせたらいけないよ。ごめんね、さっくん。今日も届けてくれてありがとね。」
おばあちゃんにそう言われて。
智くんは、口パクでごめんねって申し訳なさそうにして帰っていった。
それ以来、智くんがウチに来ることはなくて。
夏休みも残り1週間になってしまった。
あの時、智くんのことでわかったこと。
僕が行きたいと思ってる高校の1年生なこと、絵を描いたり物を作るのが好きで美術部に入っていること、釣りが好きなこと、誕生日は“いい風呂(1126)”なこと。
本当は…付き合ってる人がいるのか聞きたかったけど…そこまでは聞けなかった。
だけど、智くんが通っている高校が僕が受験したかったところだったから、合格したいって気持ちが更に強くなって…いつにもまして、宿題や塾に身が入った。
お父さんとお母さんは何がどうなったと不思議がりつつも、勉強に励む僕を喜んでいる。
調べ物をしたくて図書館に行くと、猫背な後ろ姿が目に入った。
その人が智くんだと、ひと目でわかった。
幸い、智くんの周りには人がいなかった。
近くまで来たはいいけど、智くんと接するには正面の席がいいのか隣の席がいいのかよくわからなくて…決めかねている間に、正面の席が他の人に取られてしまった。
ちょっ、ちょっと、待ってよ。
僕は智くんの隣の席まで取られたら困ると思い、急いで席に着いた。
あまりにも慌ててたから、椅子にお尻が半分しか乗ってなくて、バランスを崩して落ちそうになった。
そしたら横から智くんの腕が伸びてきて、僕を支えてくれたんだ。