第42章 時の過ぎゆくままに
3日後、塾から帰宅すると玄関先で自転車にまたがるあの人の姿があった。
「あっあの…。」
声をかけたら振り向いてくれた。
お互い目があって…
「「さっくん。」」
えっ?
僕があの人のあだ名を呼ぶと同時に…
あの人も僕のあだ名を呼んだんだ。
暫く二人してキョトンとして…
「ふふっ。」
「んふふっ。」
顔を見合わせて笑った。
僕は、あの人の名前が大野“智”という名前で“さっくん”と呼ばれているとおばあちゃんから教えてもらったこと話した。
あの人…さっくんも、お父さんから僕の名字が“櫻井”で“さっくん”と呼ばれていると聞いたらしい。
“さっくん”同士で、僕は嬉しかったんだ。
「あのさ、下の名前は何て言うの?」
「僕は“しょう”っていいます。羊に羽と書く翔です。」
「翔くんかぁ。いい名前だね。」
「ありがとうございます。僕も自分の名前が好きなんです。」
「じゃあさ。“さっくん”じゃなくて“翔くん”って呼んでいいかな…。」
翔くん…翔くん…翔くん…
「はい。勿論いいです。翔くんって呼んでください…智くん…。」
思いきって“智くん”と呼んでみた。
一瞬ビックリした顔をしたけど
「智くんかぁ。嬉しいよ。よろしくね、翔くん。」
ふにゃんと柔らかく笑ってくれて…それだけで胸がいっぱいになったんだ。