第42章 時の過ぎゆくままに
「あの…今日、店主さんは…。具合でも悪いんですか?」
「あははっ。そっか、そう思うよね。大丈夫だよ。元気、元気。」
「じゃあ、何で…。」
「俺ね、息子なの。高校が夏休みだから、手伝ってるの。」
息子さん…。高校生…。
「夏休みの間だけなんだけどね。」
じゃ…と自転車で去り行くその人の後ろ姿をずっと見ていた。
あっ。
名前…聞きそびれちゃったな…。
「ただいまぁ。」
「お帰りなさい。」
1時間後、おばあちゃんが帰ってきた。
「おばあちゃん、さっき大野クリーニングさんが来たよ。」
「ありがとねぇ。」
僕は、クリーニングの袋を外すのを手伝った。
「そうだ。おばあちゃんさ、クリーニング屋さんに高校生の息子さんがいるって知ってた?」
「あぁ、知ってるよぉ。綺麗な子だし。」
「うん。僕もね、綺麗だなって思った。」
「会ったのかい?」
「今日ね、息子さんが届けてくれたの。夏休みだから手伝ってるんだって。…それでさ、おばあちゃんは…その子の名前知ってる?」
「知ってるよぉ、たしかねぇ…。」
おばあちゃんは、名前とあだ名を教えてくれた。
あの人のあだ名。
僕との共通点を見つけて、嬉しくなった。
「むふふふふ…。」
自然と笑いが出てしまうし、あの人を思い浮かべるだけでドキドキして…。
その日の夜は、なかなか寝つけなかった。