第39章 甘い果実
苺越しに見える櫻井。
「大野さん、食べて。」
ヤバイ…そんなこと言われたら…ぷちゅ…
「あはっ。もう、大野さん…口が尖ってますよ。開けてくれないと苺が入らないじゃないですか。」
つい、いつものように苺にキスしてしまった。
そうだ、そうだよ。食べないと。
「じゃあ…あーん。」
俺が口を開けると、途端に櫻井の頬が染まった。
「はい、どうぞ…。」
櫻井の手から俺の口の中に入ってきた苺は甘酸っぱかった。
「あの…大野さん。」
「んっ?」
「お付き合いされてる方って…。」
「俺?いない、いない。櫻井は?」
「俺も…いないです。」
「へぇ…そうなんだ。よく声かけられてるの見かけるけど。」
「試しに付き合ってみるとか、イヤなんです。多分…好きになってはあげられないから…。」
「ちゃんと考えてるんだね。」
「まぁ…はい…。大野さんは…結構モテますよね。」
「うーん…モテてるのかな。声はかかるけど、その気にならなくて。相手に悪いしね。」
「そうなんですね。そういう所…いいなって思います。」
なんか照れるな…。
櫻井は苺をパクっと口にした。
俺も苺をパクっとした。
苺と練乳の甘い香りが辺りに広がった。