第39章 甘い果実
ここから最寄りの駅までは貸し切りバス、その後は解散となる。
「大野さ~ん。」
バスを降りた俺の元に、櫻井が手を振って向かって来た。
人をかき分けて段々近づいてくる姿に嬉しくなる。
「今日はありがとうございました。大野さんのおかげで、思ったよりも多く食べれました。」
「いやいや、そんな…。」
「大野さんが選んでくれた苺、本当に美味しかったです。」
「それなら俺も櫻井に感謝だよ。苺、甘かったなぁ…ありがとう。」
…櫻井はこの後は予定、あるのかな…
その一言がなかなか言えない。
「あっそうだ。櫻井にこれやるよ。」
俺はイチゴ狩りの販売所で買った苺の入った袋を櫻井に渡した。
「あの…これ…。」
「帰ったらさ、ゆっくり食べなよ。」
「なんか…すみません。いただきます。ありがとうございます。」
よし、今度こそは予定を…
「あのっ、大野さん。」
「あ、んっ?」
「この後は…予定ありますか?」
「へっ…?。」
まさか櫻井から言ってもらえるなんて…。
「大野さん?」
「あ、うん。予定はないよ。」
「良かった…。」
「えっ…?」
「この苺…大野さんから頂いたものですけど…良かったら一緒に食べませんか?」
ズキュン…
「あ、うん。いいよ。」
俺の言葉に、櫻井はとびきりの笑顔を見せてくれた。