第39章 甘い果実
イチゴ狩りは時間制限があるわけで。
参加者は皆、練乳が入ったカップを片手に苺を食べるのに必死だ。
俺も、最初は櫻井を目で追ってたけど…気づいたら苺に夢中になってた。
ドン。
「ごめんなさい。」
謝りながら振り向くと…櫻井だった。
「僕のほうこそ、ごめんなさい。あっ…大野さん。」
至近距離にいる櫻井に、俺は心臓が飛び出しそうなくらいバクバクしたけど、チャンスが巡ってきたと思った。
「沢山、食べれてる?」
「まぁ…はい…。」
「どうかしたの?」
「実は昨日…右手の人差し指をぶつけてしまって。まだ痛みがあるから、苺がなかなか採れなくて…3個なんです。」
「もう、水くさいなぁ。俺が採ってあげるよ。」
「そんな…大丈夫です。」
「せっかく来たんだからさ、楽しも。」
「あ、ありがとうございます。」
はにかむ櫻井は、抱きしめたくなるほど可愛かった。
「どれがいい?」
「えっとぉ…コレがいいです。」
「よし、いま採ってやるからな…はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
俺から受け取った苺を練乳につけた櫻井。
「いただきます…うんめぇ。甘いです、大野さん。」
俺は…目の前にある2つの赤い苺と白い液に釘付けになった。