第39章 甘い果実
俺は…赤くぷっくりした、超絶に美味しいであろう果実に魅了されている。
果実まであと5㎝、3㎝、1㎝…
ぷちゅっ。
角度を変えて…ぷちゅっ、ぷちゅっ、ぷちゅっ。
だけど、その果実からは迫ってこないんだ。
なぜならそれは…
櫻井の、あのぷくっとした柔らかそうな赤い唇に見立てた“苺”だからだ。
櫻井。櫻井翔は俺の3つ下の後輩…とはいっても、担当する仕事内容が異なるから、あまり関わりはない。
一度、トイレから出てきた櫻井の顔色が悪くて、抱き上げて医務室に連れて行ったことがあるくらいだ。
後日お礼にきた櫻井に…相手は男なんだけど…キュンとした。
抱き上げた時も感じたけど、清潔感があって爽やかな好青年。
顔良し、頭良し、性格良し。
カッコイイのに可愛らしいところもあるなんて…みんながほっとくわけがない。
はぁ…。
今日もまた俺は、手が届かない櫻井の唇と目の前の苺を見て悶々とするんだ。
俺は、ソファーにあるクッションをギュウッと抱きしめた。
明日は、日帰りの社員旅行。
メインはイチゴ狩り。
昨年は取引先との都合で不参加だった櫻井も、今年は参加する。
俺は楽しみでならなかった。