第38章 不確かな恋
「おい、こら。逃げんな。」
足の速さでは智くんには勝てず…あっという間に追いつかれ、腕を掴まれた。
ドキン…
「逃げたんじゃないよ。距離をおきたいって言われたから、離れようとしただけ。」
掴まれた腕が痛いけど、離してほしいとは思わなかった。
「距離をおくっていうのは、もうやめにしよ。」
「は?自分勝手だなぁ。」
「翔と離れるのは耐えられない。」
トクン…
「何言ってるの?僕がいなくても楽しそうにしてたじゃん。心配だってしてなかったくせに…。」
「それは…でも心配してなかったわけじゃない。」
「何それ。」
「自分から言っておいて、傍に行ったら虫がよすぎるかなって…。」
「あっそ。もういいから。」
「ダメ。よくない。」
「本当に勝手だなぁ。僕が今日、どんな気持ちで智くんのこと見てたと思ってるの?」
「ごめん…。」
謝る智くん。
その後ろからコソコソと小さく話し声が聞こえる。
さっきの3人組が物陰からチラチラ僕たちの様子を見ていた。
「智くん、とりあえずウチに来て。そこで話をしよう。」
「…わかった。」
僕は3人組の所に行き、僕たちも幼なじみで仲良しだから心配しなくて大丈夫だよと告げたら、良かったぁと言いながら手を繋いで帰っていった。