第37章 心の窓
「あり…がと。もう大丈夫。」
「ホントに?」
「うん…。ちゃんと上書きされたから。」
「それなら良かった。」
「“翔くん”って…嬉しかった。」
トクン…
俺は櫻井を抱き起こした。
「あっ、ごめん。智くんのズボン…しわくちゃになっちゃったね。アイロンあるから…。」
「このくらいのシワならそんなに目立たないし、このままでも帰れるから大丈夫だよ。」
「…帰っちゃうの?」
目を潤ませながら俺を見ている櫻井に…
「急げば終電に間に合うと思うし。」
後ろ髪を引かれそうに…
「今夜は一緒にいて…智くん。」
「翔くん…。」
いや、後ろ髪を引かれたっていい。
一緒にいたいのは俺もなんだ。
櫻井の手が俺の頬に添えられ、顔が近づいてきた。
その綺麗な顔にドキドキしながら、ぷっくりとした赤い唇に俺の唇を重ねた。