第37章 心の窓
まるでこどものように俺に抱きついている櫻井の背中を、優しくポンポンすると、
「僕なりにね、ちょっとずつ頑張ってるんだ。」
櫻井がゆっくりと話し始めた。
「まずは見た目からって思って…。」
「うん。」
「来週はね、毎日1㎝ずつでも前髪を切ってみようかなって…。」
「そっか。いいと思うよ。」
暫く沈黙した後、櫻井の腕に力が入った。
「あの…ね。」
「ん?」
「上書き…。」
「上書き?」
「うん。あの…寝る時にね、思い出して…怖くなる時が…。」
あ…何を言いたいのかわかった。
「それで…大野くんに…。」
俺は櫻井の身体を少し離して、目を見た。
「全身で抱きしめてほしいってこと…だよね?」
「うん…そうしてほしくて。」
「覆い被さるけど…いいの?」
「うん…大野くんがいいの。上書き…してくれる?」
「俺も…俺がそうしたい…。」
俺から一旦離れようとする櫻井を抱きしめたまま、体勢を入れかえていく。
俺がいいと言ってくれた。
必死にしがみつく櫻井が…切なくて愛おしくて。
俺は櫻井の頭を撫でながら、身体をゆっくりラグに寝かせていった。