第37章 心の窓
櫻井が連れてきてくれたのは、和風で落ち着いた雰囲気の店だった。
料理の注文は櫻井に任せたけど、改めて俺たちは食が合うなって思った。
「大野くん、どうしたの?なんか楽しそう。」
嬉しいのが自然と表情に出ていたようだ。
だけど多分、俺以上に…
「櫻井も楽しそうに見えるよ。」
「そう…かな。うん、そうかも。大野くんのおかげだと思う。」
「俺の…?」
俺が櫻井を見つめると、照れたように俯いた。
そんな反応されたら…こっちまで照れてしまう。
だけど…
可愛らしい行動とは裏腹に、次に発した櫻井の言葉は、しっかりとしたものだった。
「ちょっとずつになるかもしれないけど、自分の心に正直になってみようと思って。」
「“このままじゃいけない”ってやつ?」
「うん。もちろんそれもある。」
「それ、も…?」
「うん。」
顔を上げた櫻井は、俺を見つめた。
「大野くんが言ってくれたようにさ。」
「うん。」
「空や太陽を感じたいんだ。」
櫻井くんの大きくて綺麗な目が潤みだし、涙がひとすじ流れた。