第37章 心の窓
どれくらい経っただろう。
櫻井のすすり泣く声が聞こえなくなった。
「あの…大野くん。」
櫻井の声が聞こえてふと見ると、目を赤く腫らした櫻井と目があった。
俺より低い位置からの上目遣いにドキン…とする。
「どうした?」
できるだけ優しい声で言ってみる。
「胸…貸してくれてありがとう。」
「落ち着いた?」
「うん。話も…聞いてくれてありがとう。」
「あ、うん。話してくれてありがとう。」
「…うん。」
はにかんだ櫻井の顔は、とても綺麗だった。
「ちょっと待ってな。」
俺は櫻井から離れ、新しいおしぼりをもらいに行き、再び戻った。
「ほら、目に当てときな。」
「ありがとう。」
おしぼりを渡す時に一瞬手が触れた。
固まる櫻井。
だけど…俺は俺で、櫻井の手に触れてキュンとして固まって。
お互い顔を見合わせて、
「んふふ…。」
俺が先に笑うと、櫻井も
「ふふっ。」
って笑ったんだ。