第37章 心の窓
「尊敬していた先輩がね、男の先輩なんだけど…どこから聞いたのか“就職が決まったんだったらお祝いしてやる”って連絡をくれたんだ。それで…二人で食事をしてたんだけど、なんか急に眠くなってきて…気づいたら知らない部屋にいて…。
何だか重たいなって思ったら、先輩が僕に覆い被さってて…服を脱がそうとしてて…。イヤだって言ったら“女みたいな顔してる櫻井をずっと狙ってた”って言われて…。ちょうど先輩のお姉さんが帰って来て助かったんだけど…ショックで…。」
櫻井がポタポタと涙を流し始めた。
櫻井の話に、俺も胸が痛くなった。
「辛かったな。」
目の前にいる櫻井が、今にも壊れてしまいそうで…。
俺はゆっくりゆっくり櫻井を胸に抱きしめた。
ヒュッと息を飲むのが聞こえたけど…櫻井は静かに俺の腕の中にいた。
「暫くこうしててやるから。気のすむまで抱きしめられてるなり、泣くなりしていいから。俺の温もり…この時間はさ、櫻井にやるから。」
櫻井のすすり泣きが聞こえてきて…俺も目頭が熱くなった。