第37章 心の窓
翌日の就業後、俺は櫻井を連れて会社の最寄り駅に近い、知り合いの店に向かった。
事前に連絡をいれておいたら、ゆっくり話ができるようにと個室を用意してくれていて有り難かった。
俺たちは食事をしながら、家族構成やら趣味の話やらたわいのない話をした。
櫻井とは意外と趣味があい、食べ物の好みも同じで…居心地の良さを感じた。
「ねぇ、僕に何か聞きたいことあるんでしょ。」
不意に話を切り出されてびっくりしてしまった。
「どうしてそう思うの…?」
「こうして誘ってくれたの初めてだったし、何だろうな…気にかけてくれてるみたいに感じたから…。」
櫻井は、テーブルに置かれたグラスを両手で包み、視線はそのグラスに向けている。
「俺って、分かりやすい…?」
「うん。どちらかといえばね。ふふっ。」
あ、笑った…。
自ら話を切り出してくれたのも、櫻井なりの気遣いなんだろうな。
トクン…
俺の中で、新たな感情が芽生えてきた瞬間だった。