第37章 心の窓
その日、俺は思い切って櫻井を誘ってみることにした。
帰り支度を始めた櫻井に近づくけど、気づいてはいないようだ。
肩に手を伸ばしかけたところで、ハッとして引っ込めた。
危なかった…。
安易に触れて、怯えさせてしまってはいけない。
ふぅ…緊張するなぁ。
「あの…櫻井。今日はありがとう。」
気づいた櫻井が俺のほうに顔を向けた。
「あ、大野くん。お疲れ様。役にたてて良かったよ。」
あ…声色がちょっと嬉しそうだけど、気のせい…?。
「あのさ。櫻井はこの後…時間ある?」
何でこんなに緊張してるんだ、俺…。初めて誘うからかな…。
「えっ…あ…今日はちょっと…。」
「あ、そうだよね。急にごめん。」
なんか…残念…。
「ううん、僕のほうこそ…。あの、明日なら大丈夫だけど…。」
「あ、明日…うん、いいよ。俺も明日は大丈夫だから。」
俺は櫻井と連絡先を交換した。
今まで連絡先も知らなかったなんてな…。
明日なら、って櫻井のほうから言ってくれて…いいヤツじゃん。
誘いも断られなかったし…。
そうなると、櫻井に何があったのか、ますます気になって仕方がなかった。