第36章 桜筏(さくらいかだ)
翔くんとゆっくり歩く。
お互い制服だから…
さすがに、今は手は繋げない。
翔くんは右手に、俺は左手にスクールバッグを持っていて、あいたほうの腕や手の指が触れる度にキュン…とした。
ベンチや桜の近くには人が多くいるから、俺たちは、ある場所を目指した。
この公園には池がある。
散った桜の花びらの一部は池の水に浮かび、水面をゆっくり流れていく。
俺たちは、池の端にたどり着いた。
「桜筏…綺麗。」
「うん。桜が散るのはもったい気もするけど…ずっと見ていられる。」
「そうだね。」
木の柵に置かれた翔くんの左手…
俺はその手の小指の上に、そっと自分の小指を重ねた。
肩をビクッとさせて、俺のほうを見る翔くん。
頬を染めながら目を潤ませている翔くんを見て、俺は1年前を思い出した。