第36章 桜筏(さくらいかだ)
「桜…散り始めたね。」
「うん。」
「散りゆく桜ってさ…儚いよね。」
桜を見上げながら話す翔くんの髪が風になびいて、桜とともに揺れている。
あっ…
俺は翔くんの髪に手を伸ばした。
「髪に花びらが…あっ…。」
「智くん…?」
俺は崩れないようにそっと取り、翔くんに見せた。
「んふふ。」
「あっ…綺麗…。」
翔くんの髪には花びらだけではなくて、一輪の桜も付いていた。
「ふふっ。髪に付けたままでも可愛かったかも。」
「もう。智くん、なに言ってるの。」
照れてる翔くんの頬が、桜色に染まる。
「智くん。この桜、もらっていい?」
「うん、いいよ。」
桜を受け取った翔くんは、嬉しそうにそれを見ていた。