第35章 恋日記
電車に乗っていると、翔くんに送られる女の子たちの視線を感じるようになった。
だけど、翔くん自身は気にしている様子はなくて。
「話したそうにしてるよ。」
僕がそう言うと
「智くんはさ、俺があの子達と仲良くなればいいって思ってるの?」
「えっ…?」
「だってさ。少なからず好意のある人から声をかけられたらさ、期待しちゃうんじゃないの?」
翔くんにそう言われてハッとした。
僕は、話したそうにしている女の子たちに気づいていながら何もしないのは可哀想かなって単に思っただけで…その先のことまでは考えてはいなかった。
「智くんがそれでいいなら、声をかけてくるよ。」
やだ。
ダメ。
行ってほしくない。
僕は、今にも行ってしまいそうな翔くんの腕を掴んだ。
「行かないで。仲良くなってほしいわけじゃないから。」
すると、翔くんは嬉しそうにクスクス笑った。
「仲良くなる気なんか、はじめからないよ。」
そう言った翔くんにホッとした。
僕は…翔くんの隣にいるのは自分であり続けたいと思ったんだ。