第33章 キミを見つめて
「明日ね、僕は…妖精の姿に戻るんだ。」
「そっか…。」
智くんが僕の涙を親指の腹で拭ってくれている。
「こんな風にね、智くんのこと…全身で抱きしめられなくなるな…って。」
僕は、智くんを抱きしめている力を強めた。
どれくらいそうしていただろう。
「ショウくん。」
智くんの声が優しい。
「俺はね、いつもね、妖精のショウくんに…ショウくんの桜に…包まれてる感じがしてるんだよ。」
「えっ…包まれてる…?」
「うん、そう。」
智くんが僕のおでこにキスをする。
「身体は触れてなくても、大きな愛を感じてる。」
智くんのきれいな澄んだ瞳で、見つめられる。
「姿を見るだけでドキドキして…ホッとして…。」
智くんが僕の手に自分の手を絡める。
「こんな気持ちになるのは、ショウくんのおかげなんだよ。」
そして僕の唇に触れるだけのキスをした。
「智くん…。」
「それにね。こうして…ヒトになって僕に会いに来てくれた。」
「んっ…。」
智くんのキスが深くなる。
僕は心臓がバクバクして、身体が熱くなってきた。
何度も角度を変えて…
舌を絡めて…
もっと、もっと…
智くんが欲しい…
「智くん、好き…。」
「俺も…ショウくんが好き。」
僕は、智くんの首筋に唇を這わせた。
好きあうもの同士がそれを望んでいるならば…
「あっ…ん…。」
僕は智くんと身体を重ねた。
…智くんはとても優しかった。