第33章 キミを見つめて
ピンクの道を歩いていると、ふんわりと優しい風が吹いた。
その風に乗って、僕の桜のほうから花びらがひらひらと流れてきた。
僕の桜の斜め上の雲が、ハートの形に見える。
智くんもそれに気づいたようで、顔を見合わせてふふっと笑いあった。
桜と雲を見上げる智くんの横顔はきれいで、どことなく儚くて…胸がキュンとした。
そんな智くんが見つめているからなのかな…
今日の僕の桜は瑞々しく、可愛らしく見えた。
今夜も、智くんと一緒にお風呂に入った。
だけど僕は疲れてしまうから、昨日みたいに抜くことはしなかった。
その代わり、智くんと頭や身体の洗いっこをして楽しかった。
ベッドに入ると、智くんが抱きしめてくれた。
人間さんの身体で智くんと過ごせるのもあと少し。
智くんの頭…頬…肩…胸…腰…お尻…手…足…。
僕は手が届く限り触れた。
記憶はなくなってしまうかもしれないけど、感触を確かめておきたかった。
あっ…
まだ触れてないところ…
「智くん…。」
「ん?」
僕は…智くんの唇にキスをした。
「ショウくん…どうしたの…?」
智くんに聞かれても返事をしないくらい…
ちゅっ
ちゅっ
ちゅっ
ちゅっ
ちゅっ
そうしている途中から、涙がジワジワ出てきたんだ。