第33章 キミを見つめて
「ショウくん、眠いの?」
智くんの声が優しい。
「ベッドで眠りな、ねっ。」
僕をベッドに横にならせた智くんが、ベッドに凭れるようにして床に座った。
「智くんは…入らないの?」
「うん…。二人だと狭いでしょ。ショウくん、ゆっくり寝て。」
僕だけなんて…それはイヤだ。
「智くんに…抱きしめてほしいな。そしたら二人でも入れるでしょ。」
僕はベッドの端っこに移動した。
「じゃあ、一緒に寝ようか。」
智くんはふにゃんと微笑んだ。
ベッドにゆっくり上がる智くん。
僕が手を伸ばすと身体をギュッとしてくれた。
智くんの体温が心地よくて…僕はすぐに眠ってしまった。
朝の陽の光で目を覚ますと、智くんの胸が目の前にあった。
ずっと抱きしめてくれてたんだ…。
智くんの背中に回していた腕をギュウギュウしていると
「ショウ…くん…?」
智くんがゆっくり目を開けた。
寝起きの智くんは、ぽやん…としていて可愛い。
トクン…トクン…
まだ智くんと離れたくなくて…
「智くん、もう少しこのままでもいい?」
僕が聞くと、
「うん。俺もそう思ってた。」
智くんはそう言いながら、おでこにキスしてくれた。
夜中のうちに雨は止んでいたようで、この日は天気がとても良かった。
昨日濡れてしまった洋服の洗濯というものを、智くんと一緒にした。
あと、料理というものも手伝った。
だけど…僕は桜のお世話以外のことは向いていないような気がした。
智くんは、初めてなんだから仕方がないよって言ってくれた。
空を見上げていたら…
僕は…僕の桜に会いたくなった。