第33章 キミを見つめて
「お風呂が沸いたみたいだ。」
そうか。あの軽快な音は、お知らせだったんだ。
「先に入ってきていいよ。」
智くんが僕を気づかい、そう言ってくれたけど…
お風呂のことも調べてはいたものの、初めてだから不安になった。
「ごめんなさい。僕、わからなくて。一緒に入ってくれませんか。」
正直に話すと、智くんは暫くキョトンとしていた。
「あぁ…そっか。うん…ちょっと狭いけど、二人で入れないこともないし。よし、一緒に入ろうか。」
ハニカミながらそう言ってくれた。
お風呂に入るには、洋服を脱いで裸にならないといけないんだよね。
僕はいつもは洋服を着ていないから、裸になるのは平気なんだ。
だけど、ポイポイ脱いでいく僕とは違い、智くんは何やら隠しながら脱いでいる。
そういえばこの人間さんの身体には、妖精の姿の時の僕には無いものが、中心についている。
一応、人間さんに関する本で目にはしていたけど、実物は…ぶらぶらしているし、なんとも表現しにくいなと思った。
「あの…脱げました。」
僕の言葉に振り返った智くんの顔が、瞬く間に赤くなっていった。
あっ…そうか。
恥ずかしいのか。
僕は智くんと同じように、腰にタオルを巻いた。
二人で小さな部屋に入る。
モワッとしているけど暖かい。
「シャワーを出すね。」
智くんが何かをキュッとひねる音がすると、熱い雨のようなものがザーザー出てきた。
「ねぇ、お部屋の中に雨を降らせるの?」
「あはは。これは雨じゃないよ。」
智くんはそれがシャワーというもので、温かいお湯が出てくるんだと教えてくれた。
「温度は大丈夫?熱くない?」
そう聞きながら、智くんはそれを僕と自分にかけた。
その後は智くんの見よう見まねをして、シャンプーというもので髪を洗ったり、ボディソープとやらで身体を洗ったりした。
そして、いつも智くんから香る優しい匂いはこれなんだとわかった。
「湯船に浸かろうか。」
お湯の入った大きな入れものに、まず智くんが入った。
そして手招きをして、僕に自分の身体の前に入ってきていいと言う。
湯船なんて初めてだ。
恐る恐る足を入れて、智くんに背を向けて座った。
身体全体がジワ~ッと暖まっていく感じが気持ち良かった。