第33章 キミを見つめて
ドクン…ドクン…
僕の鼓動が速くなる。
それとともに感じる、身体の…なにこれ?
いつものドキドキとは違うんだ。
なんだろう…身体の中心がウズウズしている。
初めて感じる感覚に、僕は戸惑いを隠せなかった。
智くんと触れている手が熱い。
「あの…手…。」
「あ、んふふ。落ち着いた?」
「えっと…、なんか…ウズウズしてるんです。僕…おかしいのかな。」
「ううん、大丈夫だよ。おかしなことではないから。」
なんだか智くんが嬉しそうに見える。
だけど智くんがそう言ってくれるなら、大丈夫なんだろう。
「そうだ。ここにね、俺の気に入ってる桜があるんだけど、一緒に見に行こうよ。」
智くんが僕の手を引いた。
繋がれた手にドキドキして、顔が火照ってくる。
「ゆっくり歩いて行こう。」
智くんと手を繋いで並んで歩く。
時々顔を見合わせてはクスッと笑いあって。
それだけでも、すごく幸せな時間に感じた。
そして…
いつもは羽をパタパタさせて飛んでいるから気づかなかったけど、砂利を歩く感触や緩い坂道の先に桜が見えてきた時の喜びを知り、僕はワクワクした。