第33章 キミを見つめて
翌日。
言っていた通り、智くんはやってきた。
トクン…トクン…
“お互いを想いあっている”
昨日の桜長さまの話が気になって、智くんをいつも以上に意識してしまう。
「おはよう、ショウくん。」
この優しい笑顔が好きだ。
「いつも綺麗な桜をありがとう。」
キラキラしているその目が好きだ。
頭をポンポンしてくれる…
この暖かい手が好きだ。
キュン、とする。
僕は…僕は…
智くんと同じ人間さんの姿になって接してみたい。
以前から思っていたことが、僕の中で益々強くなっていった。
「ねぇ。ショウくんはさ、寒さとか暑さは感じるの?」
「うん、感じるよ。空気が変わったなって。桜とともにいるからね。春夏秋冬どの季節も、桜と同じようにね。」
「へぇ…そうなんだぁ。」
今日の智くんは、桜だけでなくて僕の姿も描いているようだ。
「ショウくんはさ、洋服を着てないからさ。その…裸じゃん?キューピーちゃんにさ、肩につくかつかないくらいの長さの髪と羽がついてる感じだし…。」
智くんは頬を染めて、鉛筆を持っていないほうの手で鼻の頭をポリポリ掻いている。
「洋服?裸?キューピーちゃん?」
僕は…なんのことだかわからない。
首を傾げている僕を見て、
「あ、知らなかったよね。ごめんね。えっとね…こんな感じ。」
智くんはそう言って、キューピーちゃんとやらを描いてくれた。
「ここに髪の毛と羽をつけると…ほらね、ショウくんみたいになるんだ。」
智くんはクスッと笑いながら嬉しそうに言った。
うーん、言われてみれば…似てるかもしれない。
だけど、人間さんと妖精では身体も違うのかな…。
もし人間さんになってみたいなら、人間さんのこと…身体のことも知っておかないといけないのかもしれない。そう思った。