第33章 キミを見つめて
「桜のお世話についてから100年を迎えた者にはな、3日間だけ、他の世界に行く権利が与えられるのだ。」
「えっ、知らなかったです…。」
今までそんな話は一度も聞いたことがない。
「そうだろうな。知らなくても仕方がないことなのだよ。その事は100年を迎えた者にしか話さないし、その3日間が過ぎたら、その間の記憶は消えてしまうのだから。」
「その間の記憶が消える…。」
「お前だけでなく、関わった者の記憶も勿論消えるがな。」
「それは…どんなことでもいいのですか?」
「あぁ。ショウがやりたいことなら」
僕がやりたいこと…。
だけど…。
「その3日間、桜のお世話は…。」
「ふふ。ショウらしいな。その心配はしなくても大丈夫だから安心しなさい。お前の桜は、普段のおこないをよく知っているからな。ショウがやりたいことであれば、快く送り出してくれるだろう。」
桜長さまは、ニッコリと優しく笑った。
桜長さまの元を後にした僕は、そのまま桜のところに向かった。
今まで桜と離れたことなんてなかったな…って思う。
「あのね…」
不安と緊張の中、桜に問いかけてみる。
「僕は…他の世界を見てきていいの?」
桜がサワサワと揺れ、甘くて優しい香りがふわっと漂った。
桜たちが後押ししてくれているパワーを感じる。
「ありがとう。大好きだよ。」
僕はパタパタと桜の周りを飛び、その1つ1つに感謝した。