第33章 キミを見つめて
「妖精さん、大丈夫?」
「あれ…?僕…。」
「急にね、倒れたから心配したよ。」
「ごめんなさい。助けてもらってありがとうございます。」
「身体、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
僕の頭を心地よいリズムで撫でてくれている。
「妖精さんは…名前はあるの?」
「僕は、ショウっていいます。」
「へぇ、ショウくんかぁ。いい名前だね。僕はね、智っていうの。」
「智くん…。」
優しい雰囲気に似合う名前だなって思った。
「あの…。」
「ん?」
僕はまた聞いてみることにした。
「僕のこと、見えるんですよね…。いつからですか?」
「んふふ。えっとね…昨年、葉桜になった頃かな。」
「昨年…。」
「うん。最初はね、桜の周りを飛んでる姿が見えてね。見たことのない鳥かな…って思ったの。」
「はい…。」
「でも、よく見たらさ。淡いピンクのベールみたいな羽があるし、手足もあるからさ。鳥じゃないな、だったら妖精さんかなって。」
智くんは優しい眼差しで僕を見ている。
「すごく可愛いな、きれいだなって…。今年もまた会えるかなって来てみたら、また会えたんだ。」
頭を撫でていた智くんの手が、僕の頬と羽を優しくひと撫でした。
「ヒャッ。」
「あはは、ごめんね。可愛くてつい…。」
智くんは自分の太腿に僕を立たせた。
もう少し手のひらに包まれてても良かったのになぁ。
そんなことを思いつつ、僕は羽をパタパタさせてみた。
「ショウくんは…本当にきれいだよね。ショウくん自身が桜みたいだ。」
トクン…トクン…
そんな風に智くんに見られたら…僕は、僕は…。
胸がキュウッと苦しくなった。