第32章 サクラ色の空
「俺ね、東京の大学に行きたいんだ。」
翔くんからそう聞いたのは、
高校3年生になってすぐだったね。
言い辛そうにぽつり、ぽつりと話すキミ。
でも、何となく気づいてはいたよ。
翔くんの部屋の本棚にさ、
それらしき参考書が数冊あったから。
賢い翔くんだもん。
あぁ、やっぱりな…って思ったよ。
そして多分だけど…
大学を卒業した後はさ、
就職もそっちでするんだよね。
一緒にこっちにいようよ、
なんて言えない。
俺も東京の大学に行こうかな、
とも言えない。
翔くんにも話したことあるけど、
俺はいずれね、実家の商店を
継ぐつもりでいるから。
翔くんも翔くんの人生が
あるんだもんね。
本当はさ、そこに
俺がいれたら…
なんてね。
夢のまた夢なのかな。
「東京に行ったらさ、
たまにはメールだけじゃなくて
電話で声を聞かせてくれるかな。
俺ね、就職するでしょ。
貯金をね、
ちゃんとするからさ。
それでさ、
翔くんと会えた時にさ、
色んなとこに一緒に行こうよ。
ねっ。
俺はここにいるから。
翔くんのことを想って
いつでもここにいるから。」
昨日伝えたこの思い…
キミに届いてますように。