第32章 サクラ色の空
小さい頃からずっと
一緒にいたよね。
いつかはこんな日が
くるってわかってた。
まだ数分なのにさ。
苦しくて、苦しくて、苦しくて。
寂しくて、寂しくて、寂しくて。
「こっちに帰ってきた時は会おうよ。」
なんて…
さっきまで言っていた俺は
どこにいったのかな。
東京に行くキミと地元に残る俺。
電車の窓ガラスに張り付いて、
人目を憚らずに
泣きながら手を振るキミ…
翔くんを乗せた電車が
満開の桜のアーチの中に
入っていった。
淡いピンクの中に
消えていった翔くん…
不安よりも、
楽しみのほうが大きいのかな。
そんな風に感じたんだ。
そのほうが嬉しいけどね。
俺は暫くその場から
離れることができなくて、
静まった桜を眺めていた。
18歳の春。
俺と翔くんは
新たな生活を
走り出したんだ。