第29章 素直に言えなくて
(Oサイド)
翔くんには、敵わないな。
さみしいならさみしいって言っていいんだって。
俺が描いてた翔くんの絵のことも…
楽しい気持ちで描いてたんじゃないよねって。
だからうまく描けなかったんじゃないかって。
俺以上に俺のこと、わかってるんだな。
俺も翔くんをギュウッと抱きしめ返した。
「あはは。本当にもう…素直じゃないんだから。」
「いいんだよ、翔くんはわかってくれるから。」
「たまには素直に言ってほしいけどね。」
そうして暫く抱きしめあった。
俺は翔くんの後頭部を引き寄せた。
重なりあった唇。
10日ぶりに触れた翔くんの唇は温かくて優しくて。
心が満たされたんだ。
「言わなくてもわかるだろ。」
俺がそう言うと、翔くんは微笑みながら頷いた。