第28章 55㎝の空間
「櫻井くん、手…疲れない?」
「ううん、大丈夫だよ。いつもと腕の位置は変わらないから。」
「そっか。疲れたら言ってね。傘持つの、代わるから。」
「うん、ありがとう。」
櫻井くんとは…身長は5㎝くらいの違いなのかな。
スタイルいいから、もっと大きく見えるけど。
足も…長いな。
歩幅が違うけど、櫻井くんの2歩と俺の3歩がちょうど同じ進み具合みたいだ。
2歩…3歩…2歩…3歩…2歩…3歩…
たったこれだけのことでも、こんなに嬉しくて胸が弾むなんて。
隣でクスッと笑うのが聞こえた。
「なんか楽しそうだね。」
「…そう見える?」
「うん。ずっと黙ってるからさ。つまらないのかなって思って顔を見たら…ニコニコしてた。」
そんなに表情に出てたのか…。
「ほら、大野くんてさ。ポーカーフェイスのイメージあるからさ。」
「あ~、それよく言われる。何を考えてるのかわからないって。」
「でもさ、さっきからさ、色んな大野くんが見れて…嬉しいな、なんて。」
櫻井くんがはにかんでる。
「あっ、ほら。こんな風に大野くんと二人でいるなんて初めてだし。」
「そうだよね。」
「初めてがまさかの相合い傘なんてね。」
そうだよ、相合い傘なんだよ…俺も今になって何だか恥ずかしくなってきた。