第28章 55㎝の空間
櫻井くんは隣のクラスだから、接点はあまりない。
共通の友達がいるから、顔見知りではあるけど。
こんなに近い距離でいるのは初めてだ。
トクン……トクン…
駅に早く着いて欲しいような、欲しくないような…そんな気持ちでいた。
あっ…
いい匂いがする。
櫻井くんのシャンプーの匂いかな。
爽やかな櫻井くんにピッタリな匂いだ。
「大野くん、眠くなったの?」
櫻井くんの声で我にかえった。
「えっ、なに?」
「あはは。起きた。」
「起きた…?」
「だってさ。目を閉じて俺の肩に凭れてきたからさ。眠いのかなって。」
うわっ、全然気づかなかった…。
「違う違う。なんだろう…疲れてたのかなぁ。」
「そうだよね。寝ながら歩いていたらすごいよね。」
寝てたわけじゃないけど、何とか誤魔化せた…かな?