第26章 君に触れたくて
「俺は…あの時はさ、大野くんは患者さんで俺はナースだから、ってさ。そう自分に言い聞かせて、何とか理性をおさえてたっていうか…。」
「うん、うん。」
「だってさ、目の前にいる好きな人がさ、俺の手が触れる度にビクッて反応するから…。変に意識しないようにって…くすぐったいのかなって思うようにして。」
「へぇ…。」
大野くんはクスクス笑っている。
「んふふ。好きな人、ね。」
「えっ?……あっ。」
「言っちゃったね。」
「言っちゃった。」
「知っちゃった。」
俺たちは顔を見合わせて笑いあった。
「あぁ~もうっ。俺は目の前にいる大野智くんのことが好きです。髪に触れて、意外と髪質が柔らかくてサラサラしているんだなって思いました。おでこにホクロがあるのを初めて知りました。程よい筋肉とキレイな肌にドキッとしました。枕を抱えて眠ってる姿が可愛らしくてキュン…としました。その姿を他の人には見せなくないと思いました。大野くんに話をはぐらかされて、ご愛嬌でほっぺたにキスまでしてしまいました。まさか大野くんから俺の唇にキスさ“ペシッ!”…いってえ。痛いよ。」
大野くんに頭を叩かれたんだ。
「シッ!お前さ、段々声が大きくなってきたからさ、廊下に聞こえるんじゃないかって思ったよ。」
真っ赤な顔をした大野くん。
「あはは…ごめん。」
「まぁ、いいけどね。ふふっ。」