第26章 君に触れたくて
「俺もさ、櫻井翔のことが好き。」
「まさかぁ…。」
「何で嘘つかないといけないんだよ。」
「ご飯誘っても行ってくれないじゃん。」
「それはさ、本当に眠いからなの。よく考えてみろよ。お前が誘ってくるのさ、毎回…。」
「夜勤、明け…。えっ、じゃあ、じゃあさ。」
「ふふっ。そういうこと。」
「もう、なんだよ。早く言ってくれよ~。」
「そんなところも…好きだから。」
大野くんが優しい表情で俺の手を包んだ。
「この温かい手に…もっと触れてほしいなって。」
片手で手を握りながら、もう片方の手を俺の頬に添えた。
「声をもっと聞かせてほしい、この大きな目でもっと俺を見てほしい。」
今度は握っていた手を離し、俺の唇を指で撫でる。
「このぷっくりした唇…触れるのは俺だけにしてほしいなって。」
「大野くん…。」
大野くんの瞳が潤んで揺れている。
俺は大野くんをギュッと抱きしめた。
「俺もさ、同じ。触れたくて触れたくて触れたくて。いいの?しつこいくらい触れるよ。」
「うん。いいよ。」
俺の腕の中にいる大野くんが愛しかった。
俺たちは、どちらからともなく顔を近づけ…あと少しで…
ガチャッ
…おあずけをくらった。
「今日の仕事終わり、どう?」
「もちろん行く。」
指先だけ絡ませるように触れた…誰にも見えないように。
大野くんがウチに来ても喘息を起こさないように…部屋、キレイにしよ。
END