第22章 たまにはね…
俺はソファーに座ってたけど、
地べたに座っている智くんの隣に移動した。
「でさ、一体何があったのよ。」
唇を尖らせ、いかにも拗ねている様子の
智くんに聞いてみた。
チラチラ俺を見ている。
「今日さ、取引先でさ…聞かれたんだよ。」
「何を?」
「櫻井くんはもう来ないのか…って。」
「もしかして…あの?」
「うん…。」
なるほどね…。
その取引先は、智くんと俺で二人三脚で契約に取り付けた。
仕事を進めていくにあたり、デザイン系が得意な智くんがメインで担当になったんだ。元々アプローチを始めたのは智くんだったし。
俺は俯き加減の智くんの右肩に腕を回して、
自分のほうへ引き寄せた。
智くんはイヤがる様子もなく、
俺の右胸に頭を凭れた。
「それで、なんて答えたの?」
「櫻井は来る予定はありません…って。」
「うん、それでいいよ。」
「だけど…あの人、翔くんのこと気に入ってたから…。」
「俺が気に入ってるのは、智くんだけだけど?」
そう囁きながら、智くんの耳にキスをした。
「ヒャッ。」
「あはは。」
「もうっ!やめろよな。」
真っ赤な顔してぷりぷりしてる。
「ごめん、ごめん。」
「まったく…もうっ。」
本気で怒ってるわけじゃないの、わかるよ。
だって…今さ、ふふってはにかんだでしょ。