第21章 君がいいんだ
サトコが住んでるアパートの最寄り駅で降りたの。
家までは歩いて5分。
翔くんがまた恋人繋ぎをしてくれて
本当に嬉しかった。
一歩一歩幸せを噛みしめながら歩いてたけど
多分ね、靴擦れしてると思う。
幸せと同時に踵の痛みも感じて…
あっという間に着いちゃった。
考えてみたらね、翔くんはまだ
新居には遊びに来たことなかったの。
上がってもらおうか迷ってたらね、
翔くん、気を遣ってくれたのね。
「今日はありがとう。疲れたでしょ、ゆっくりおやすみ。」
って…。
緊張の糸も切れたし…
翔くんとの夢の時間も終わって…
サトコね、泣いちゃった。
そしたらね、翔くんがサトコを引き寄せて
前髪をかきあげて、おでこに
ちゅっ。ってしてくれたの。
胸がきゅっと苦しくなって
ばいばいって…
ろくに翔くんの顔を見ないで玄関に入っちゃった。
バカなサトコ…。
いや、もう…智か。
パンプスを脱いだら、やっぱり靴擦れしてた。
バンドエイド、まだ買ってなかったな。
暫く玄関先でペタリと座ってた。
そうしてどれくらい経っただろう。
玄関のチャイムが鳴ってることに気づいた。
除き穴で確認すると…翔くんがいた。
カーディガンの袖でガシガシ涙を拭いて、
ゆっくり玄関のドアを開けたんだ。