第21章 君がいいんだ
翔くんがね
「サトコちゃんを連れて行きたい所がある。」
って言うから
お任せすることにしたの。
電車には乗らずにね、
会社の方たちとよく行くコーヒーショップや
仕事帰りに立ち寄る本屋さんとか
お気に入りの洋服屋さんに連れて行ってくれた。
どこも長居はしなかったけど
翔くんの顔見知りの人たちに
サトコの存在をアピールするように…。
「俺の彼女」
そう言われる度に胸の鼓動が早くなって…
慣れてないから仕方ないわよね。
幼馴染みだからね、
少しニュアンスを変えるだけで
いくつかエピソードなんかも
話すことができちゃった。
色々回ってる間ね、
翔くんの眼差しが眩しくて
恥ずかしくなって…
ちょっと視線を反らすと
「サトコちゃん。」
って甘く優しく名前を囁かれて。
もうね
ドキドキしっぱなしだったの。
手を繋いだり肩を寄せあったり…
すごく暖かくて
ふわふわしたキモチだったの。
だけど
サトコの夢の時間は
もうすぐ終わるのね。
翔くんに彼女がいることを
みんなに知ってもらえたから…。
だって…
最初の目的はそれだったんだもん。
本当に彼女がいるなら会わせろ
…ってね。
だから…
サトコが翔くんとデートできたのは
ご褒美のようなものなのよね。
この恋人繋ぎも…
もうすることはないんだろうな。