第20章 kagero
あの人はどうしてここに来るんだろう。
どうしていつも一緒に音楽を聴いているのだろう。
どうしてたいした会話もせず帰って行くのだろう。
何がしたいの?
どうしたいの?
俺の中の熱はどうしたらいいの?
俺はどうしたいの?
今日もまた目の前にあの人がいる。
一緒に聴いてるのは、いつもと同じあの曲。
だけど…
今日はいつもと違っていた。
俺の指先に触れている、あなたの指先。
ほんのちょっと触れてるだけなのに
何だか涙が出そうになる。
俺もあなたもお互いの目を見ている。
潤んでいるあなたの瞳。
俺の瞳も潤んでるかもしれない。
耳からはあの曲が流れている。
気づいてたけど、気づかないふりをしてた、この気持ち。
あなたも同じなのかな…。